わたくし、寝るときに身体の一部が窮屈な思いをしていないと眠れません。
あおむけに大の字、身体に触れるのはサラサラのシーツとふわふわのお布団だけ。そんな状況では、安眠どころか、睡眠導入までたどりつくことすらできません。
腕枕というやつは、実はよっぽどうまく首と枕と腕の位置関係を築き上げないと、どうにも首は疲れる、腕はしびれるの共倒れとなってしまいますが、わたしの場合は程よく首に負担がかかるぐらいが都合がいい。ただしこれも、腕枕的黄金の三角比を長年にわたる女道にて身体が習得してしまい
「君なら何故か一晩、腕枕してあげられるぜ」
と殿方に言わせちゃたりできるようになった今では、何の役にも立ちません。
貞淑な人妻となった今、眠るときはダンナさんに
「ちょっとお尻…貸してね」
と言って、わたしの右側に寝るダンナさんのお尻の下に右手を挟み込ませていただいております。ダンナさんが熟睡して、ある程度わたしの手が軽くしびれるくらいの重みがちょうどよろしい。
「ごめん、今日は疲れすぎてるから、挟まないで…」
と冷たくされると、仕方ないので自分のお尻の下に手を挟み込みます。
当初はおねだりするたびに、不思議そうに時にゲラゲラ、時に呆れられていたこの行為。
いまではあたりまえの営みとなっているのが、我ながら微笑ましく思ったり、思わなかったり。
実のところ、手を挟むのが手軽なのでそうしているだけで、手じゃなくても別に良かったりします。
ちょっと脚や身体がねじれた変な格好だとか、壁にぴったりくっついて片側が窮屈だったりとか。
それでも充分イケルのです。ですので、北海道帰省の折など、やむなくひとりで眠らなければ行けない場合、変な格好で寝ています。
睡眠導入以降、これらの体勢はいつのまにか形態を変えているようです。
目覚めたとき、よくあるパターンでは、両手をまっすぐ上にした万歳の形。
それは中途半端なスタイルではなく、さながら腕だけはバレリーナにも似た完全形です。
ダンナさんが「朝辛いだろうから…」と、途中で目覚めて気づいたときは、ゆっくりゆっくり腕を直してくれているらしいのですが、また再び万歳をして「痛ててててっ……」と朝、硬直した腕を下ろして起床しています。
幼少期の何が原因でこうなっているのか。
実家が、恐ろしいほど厳しい躾をわたしにしていたので、その影響なのかもしれませんね。
そして今夜もあたくしは…
きっとまた夫に「ねぇ…お尻、貸してね…♡」と可愛らしくおねだりしちゃうのでございます。