
リリーさんの飄々とした雰囲気が好きなので、ずっと「読みたいなぁ・・・」と思っていて暫くしたら、ダンナさんが買ってくれました。
読むのが早い彼が先に読んだのですが、読んでいるあいだの数日間で彼の中で何かが変わり始めているのが、わかりました。
「親の死を乗り越えて、初めて一人前になる」
よくそんな言葉を聞きます。わたし自身も最愛の父の死を乗り越えたとき、母の生死にかかわる大手術を経験したとき、自分でも「変わった」と思うほどに大きく自分の中で何かが変わっていきました。
忍耐するということ、思いやり・・・そんなことをそれまでの視線とはまた違う方向から再認識できたような気がします。
そんなリリーさんのオカンやオトンとのエピソードや思いを読むことで、まだそれを経験していない彼が変わっていく。大阪に住む義父からかかってきた電話に、「オトン・・・あれはどうなんや?」と興味のある話題を選んで語りかける横顔が、とても嬉しかったです。
リリーさんの育った街が、わたしの生まれ育った街ととても似ていてどの景色も懐かしかったです。
実は、オカンが危篤状態に入ってからの2ページを、どうしても読むことが出来ず、最初に飛ばして最後まで読みました。そのあと深呼吸をして、その2ページをようやく読むことが出来ました。
自分の身体の中にとどめたい・・・その気持ち、わたしも同じでした。冷たく横たわる父の顔をいつまでも撫でていました。人からは奇異に見えるかもしれないけれど、生まれてからどんな係わり合い方をしてきたかによって、それが当たり前の姿である場合も多いと思います。
オトンの哀しみも痛いほど心に刺さりました。
この本を読んだ人が、いつまでもこの本を大切に胸に抱いてくれますように。
あの日、寂しさで壊れそうな思いを押しこらえ、「幸せになるのよ」と、遠く離れたここに送り出してくれた母に感謝。