
ほろ苦い恋愛を経験する前に、3段飛びでイタ気持ちいい恋愛人生に入ってしまったわたしとしては、読むのに実はちょっと勇気が必要でした。読み始めの数行でほんの少しだけ「ラストまで読み切れるかしら…」と既に斜めから読み始めた次第。
しかしそんな不安は言うに及ばず、歌詠み人の書く小説。全編にわたってリズム感があり一気に読み終えました。その反面、もうちょっとコッテリした嫌味な部分が描かれていても良かったかなぁ…という読後感があったのだけれど、これはきっとこの枡野浩一という人の味なんだろうとも思いました。
登場人物は誰も個性的で愛らしい。そして、それぞれがそれぞれの理由で繋がっているように見えるけれど、それぞれは実はとても孤独な存在として描かれている。それを表現するために、お互い意外の人間との繋がりがあまり描かれていないのであれば、かなりのテクニシャンだと思った。
レビューを書くにあたって言葉を選んでみると、あ〜だから短歌なんだ。ショートソングなんだと、改めて気がついたんだけど、この解釈は的はずれだったりするのだろうか?
この人が書く、創作物としての人間のもっとドロドロした厭らしい部分を描いた作品もいつか読んでみたいと思いました。
【追記】
それから本の内容とは別に…実は電車の中で各章のタイトルと、丸囲みのCherryboy/Playboyのマークを親指で隠しながら読みました。これはある意味、作者から読者への羞恥プレイなのかと思いました。
次回作に期待のちょい甘め、☆4つ。