
レビュー これまでの一葉について書かれたものは、どれも生涯清く貧しくただひたすらに慎ましかったといった内容だったらしいのですが、これは日記などを元に別な角度から見たもの。
実のところ、樋口一葉自体がどこか『良い子』すぎる印象を学生の頃に抱いてしまい、その作品はまともに読んだことはありませんでした。
わたしとしては、著者の説が当時の時代背景から見てもごくごく自然ではないかと思いました。むしろこれまで称えられていたものには、無理がありすぎのような。ただしそれらを言い切ってしまうには、あまりに資料が少ない(一葉自身、あるいはその家族が一葉の死後、該当する日記を破ってしまっている)ので、なんともいえない歯痒さを感じてしまいました。
ただ読後、わたし自身が一葉の写真をじっと見つめながら、心に浮かぶ思いがありました。ここに書かれきらなかった、樋口一葉の女性としての魅力、没年が24歳でありながら、その強かな生き方、わたしたちが思うよりずっと、女として激しい生き方をした人だったのではないかと思いました。
作品をちゃんと読んでみたいと思わせてくれました。