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阿部定事件―愛と性の果てに

阿部定、といえば男を殺してチンコをちょんぎった変態女、というのが世間的な評価だと思う。
その事件を予審調書(戦前の裁判制度の一つで、現在はない)から再構築したノンフィクション本。

彼女は神田の裕福な畳屋の末っ子に生まれた。かなりかわいがられたようで、職人がひっきりになしに出入りする環境から10歳ですでにセックスとはどういうことかを知った。兄が妻を追い出して水商売の愛人を家に入れたことから家庭はゴタゴタしており、それを目に入れさせないために親はしきり外出ばかりさせるようになった。
そして15歳で友人の知り合いである慶応大生に強姦された。
そのころは今とは違って貞操観念の非常に強い時代だから、自分の人生を悲観しグレて、町の不良とつるむようになり不特定多数とセックスするようになり、家の金を持ち出してばらまく生活を送るようになる。父親がそれにキレて「そんなにセックスが好きなら芸者にする」と遠縁の業者に売り飛ばした。これが18のとき。
ここから東京・横浜・名古屋・大阪・富山・長野と各地の遊郭で売春生活をする悲惨な人生が始まる。

名古屋で知り合った市会議員は、そんな彼女を更正させようと、「店を出すための金は出すから、料理修行でもしておいで」と入った店の主人が、被害者だ。犯行当時は30歳だった。

調書ではこの主人はマゾヒストで、セックスは達者であり、3日の間も寝ずにずっとセックスし続けたとの記述もある。

天性のセックスマシーンだった彼女とマゾヒストで精力絶倫だった被害者はやがて、店から出奔した。そして、「やがて妻のもとへ戻ってしもうくらいなら、殺して永遠に自分のものにしたい」と思って絞殺した。

調書から見えてくる姿は、「わがままで奔放ではあるが、馬鹿ではなく、一途な女」というイメージだ。時代もあるが、最初に強姦されてやけくそになったときに、周りが世間体を過度に気にせず、適切なアドバイスをしてあげていたら、こんなことにはならなかったんだろうと思う。

彼女は美しく妖艶で声も凛としていたという。セックスは激しく、朝まで寝ずにし続けることは普通であり、あまりのハードさに逃げ出した愛人もいたほどだ。天性の身体を持ってしまった悲しさもあるかもしれない。

取調べの文章をそのまま採録しているので、肉声がそのまま聞こえてくるような、生々しい感じだ。
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